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Organism
森が魅せる生命の舞台
〈生き物との関わり合い〉

― 生活習性 ―
マングローブ林は1日6時間周期で潮の水位変動を受けるため、生き物の生活様式は時間によって大きく左右される!

― 多種多様 ―
水陸両生の独特な環境が融合しているため、野鳥、甲殻類、貝類、稚魚がマングローブを格好の居場所として暮らす!

― 食物連鎖 ―
日本のマングローブでは鳥類が生態系の頂点を占め、他の生物は藻類や落ち葉、微生物を摂取して生き延びている!

― 空間活用 ―
外敵から身を守るためにマングローブの水辺に暮らす甲殻類は、複雑な根の隙間を利用して巣を作り上げる!
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Environment
水陸両生の環境
〈生態系の神秘的ドラマ〉
― 生息区域 ―
マングローブ植物では海水濃度の違いが樹種の棲み分けを左右する。底生生物は具体的に干潟の土壌性質、鳥類や魚は森林密度、地上に露出する根の構造といった環境条件の指標を総合的に用いることで観察の判断材料が明確になる。

― 活動時間 ―
天候が晴れて暖かい日はマングローブに生物が多く集まるが、雨や冬の寒い日には全体の活動が低下する。貝類とトビハゼは昼夜を問わずに現われてシオマネキは日中活発化し、アナジャコは夜行性で季節と時間帯で行動パターンが顕著になる。

― 食物連鎖 ―
マングローブは潮位によって環境と生態系機能が交互に入れ替わる。水没する満潮時は甲殻類が巣穴へと退避し、沖合いから稚魚が来ると野鳥が水面で捕食する食物連鎖のリズムが展開され、生物の栄養供給と資源配分の循環が生まれる。

― 主要生物 ―
日本のマングローブは底生生物(英名:ベントス)と呼ばれる甲殻類や貝類などの性格が穏やかな無脊椎動物が暮らし、満潮時には小型のサメが泳ぐ事もある。野生個体群の平均寿命は約5年程度で、繁殖活動が活発に行われ世代交代を維持する。
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分類
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科名 | 和名 |
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甲殻類(小型)
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スナガニ科
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シオマネキ
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甲殻類(大型)
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ワタリガニ科
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ノコギリガザミ
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貝類(小型)
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ウミニナ科
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キバウミニナ
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貝類(大型)
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シジミ科
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シレナシジミ
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魚類
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ハゼ科
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ミナミトビハゼ
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鳥類
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サギ科
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チュウサギ
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昆虫類
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タテハチョウ科
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オオゴマダラ
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Nature
驚異の自然法則
〈海と森が導く造形美〉
― 芸術模様の砂粒 ―


マングローブは鳥の糞や葉の破片、微生物の遺骸から成る有機物(デトリタス)が豊富。そこに生息するミナミコメツキガニやシオマネキは砂の栄養素を口でこし取り摂取し、粒状にして吐き出す習性を繰り返すため干潟一面は砂の模様になる。
― 謎めく泡と匂い ―


満潮時のマングローブ水面には土の膜でできた泡が浮遊する。これは土の微生物が有機物を分解する過程で臭気を発生させる、「硫化水素とメタンガス」が水中から気泡となり放出する現象で、泡と混ざる微粒子にはカニが掘った残土も含まれる。
― 連なる泥塚の山 ―


オキナワアナジャコは夜行性で、深夜にかけてマングローブ林の泥土を掘削して高さ約1mになる火山のような塚を築く。塚を掘り進めると深さ約2mまで地下迷路の複雑な構造を形成しており、捕食者を回避するための定住空間となっている。
― 根元に土の煙突 ―


ミナミトビハゼはマングローブの根元に筒状の巣穴を築くことがあり、根元の隙間と側面に泥を寄せ集めながら煙突状に積み上げていくことで崩落を防ぐ。外敵から内部が気づかれにくい構造を作り、安心して身を潜めるよう工夫している。
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Benthos
シオマネキ類
〈干潟や岩に潜む〉
― ベニシオマネキ ―

スナガニ科に属し学名は「Uca chlorophthalma crassipes」、和名が紅潮招。紅色の鮮やかな甲羅が特徴で、オスのハサミは片方が大きく個体により黒や水色の斑点があり屋久島以南に分布。甲幅は約1.5㎝で警戒心が強い。
― ハクセンシオマネキ ―

スナガニ科に属し学名は「Uca lactea」、和名が白扇潮招。夏の繁殖期にオスはメスに対してハサミを上下に振りかざす「ウェービング」という求愛行動もみられ奄美大島以南に分布。甲幅は約1.8㎝で春から秋に活発化する。
― ヒメシオマネキ ―

スナガニ科に属し学名は「Uca vocans」、和名が姫潮招。太陽と雲が溶け込んだ色合いでハサミの下半分がオレンジ色、片方だけ大きくギザギザしているのがオスで九州以南に分布。甲幅は約2.5㎝で春から秋まで活発化する。
― ルリマダラシオマネキ ―

スナガニ科に属し学名は「Uca tetragonon」、和名が瑠璃斑潮招。水色と紺をした美しい模様の甲羅を身に付け、警戒心が非常に強いため沿岸でもほぼ岩場に隠れていることが多く奄美群島以南に分布、甲幅は約2.5㎝である。
― ヤエヤマシオマネキ ―

スナガニ科に属し学名は「Uca dussumieri」、和名が八重山潮招。甲羅は紺色でありオスはハサミは下半分がオレンジから赤、メスはハサミと足が水色で奄美大島以南に分布。甲幅は約2.0㎝で警戒心が高く、夏に活発化する。
― ミナミヒメシオマネキ ―

スナガニ科に属し学名は「Uca jocelynae」、和名の正式名称なし。2010年に新種として発見されたシオマネキ類で、水色と黄緑のグラデーションの甲羅と可愛らしい瞳が特徴で宮古島以南に分布。甲幅は約2.0㎝である。
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Benthos
甲殻類/貝類
〈根元や葉の影に潜む〉
― ミナミコメツキガニ ―

学名は「Mictyris brevidactylus」、和名が南米搗蟹。体は青い宝石のように美しく、回転しながら巣に潜るほか縦に歩行可能。集団移動するため軍隊ガニとも呼ばれ奄美大島以南に分布し、甲幅は約1.5㎝で通年活動する。
― ノコギリガザミ ―

ワタリガニ科に属し学名は「Scylla」でマングローブクラブとも呼ばれ、甲羅は濃い茶色で普段は泥のなかに隠れているため出現頻度が少ない。非常に強力なハサミをもち静岡の浜名湖以南に分布し、甲幅は約20㎝で通年活動する。
― ツノメガニ ―

スナガニ科に属しており学名は「Ocypode ceratophthalmus」、和名が角目蟹。夜行性のカニで尖った目の先端と白いハサミが特徴。逃げ足が速く浜辺のアスリート的な存在で相模湾以南に分布し、甲幅は約6㎝である。
― ヤエヤマヒルギシジミ ―

シジミ科に属し学名は「Geloina erosas」、和名が八重山漂木蜆。別名シレナシジミで知られる日本最大の巨大シジミで、貝の中身は小さく泥を養分とするため水質浄化も促す。奄美大島以南に分布し直径は約10㎝で通年活動する。
― キバウミニナ ―

キバウミニナ科に属しており学名は「Terebralia palustris」、和名は牙海蜷。直径約8㎝の渦を巻いた塔型の巻貝で、根元にある落ち葉を「歯舌/しぜつ」と呼ばれる硬いヤスリ状の歯で削り取り捕食。沖縄本島以南に分布する。
― イロタマキビ ―

タマキビ科に属し学名は「Littoraria pallescens」、和名は色玉黍。見た目がタニシと似ており殻には白黒模様が入り個体によっては一部黄緑や白色も。マングローブの葉を食べながら生活しており奄美群島以南に分布する。
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Benthos
魚類/鳥類/昆虫類
〈水中や空中に潜む〉
― オキナワアナジャコ ―

オキナワアナジャコ科に属し学名は「Thalassina anomala」、和名が沖縄穴蝦蛄。深い穴の中で暮らす夜行性の甲殻類で、ザリガニや小型のロブスターとよく似ている。奄美大島以南に分布し大きい個体だと直径が最大約30㎝にもなる。
― ミナミトビハゼ ―

ハゼ科に属し学名は「Periophthalmus argentilineatus」、別名トントンミーとも呼ばれている。皮膚呼吸できる水陸両生魚で、胸ビレを使い干潟を忍者のように飛び跳ねる。種子島以南に分布し直径約6㎝で警戒心が高い。
― チュウサギ ―

サギ科に属し学名は「Ardea intermedia」、和名が中鷺。「グアー」という鳴き声を放ち全身はダイサギと同じ白色。口ばしの黄色いラインが目元の後ろまで伸びていのが特徴で本州以南に分布し、全長約70㎝で春から夏に活動。
― ムラサキサギ ―

サギ科に属し学名は「Ardea purpurea」、和名が紫鷺。日本では沖縄県の八重山諸島に生息する留鳥であり、全身がやや青みのある色をしており首の付け根には焦げ茶色。縦筋模様がみられ石垣島以南に分布し、全長約80㎝ある。
― オオゴマダラ ―

タテハチョウ科に属し学名は「Idea leuconoe」、和名が大胡麻斑。亜熱帯地方で通年活動する日本最大級の大型の蝶で、白地をした大きな羽には黒い斑点模様がまだら。鹿児島県与論島以南に分布し、全長約10㎝程度ある。
― リュウキュウアサギマダラ ―

タテハチョウ科に属し学名は「Ideopsis similis」、和名が琉球浅葱斑。焦げ茶色をした大きな羽に色鮮やか水色のスジ模様あり。気温が低下すると集団となって木の枝などで身を寄せ合い奄美大島以南に分布する。
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