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Mehirugi
雌漂木
〈メヒルギ〉

マングローブ林ではやや陸側に生育するヒルギ科の常緑木本であり、薩摩半島以南に分布している。盆栽のように樹形が美しく整い、耐寒性に優れているのが特徴で、沖縄本島や奄美大島では板状をした大きな根を張る巨木も生育している。
〔 ▓ 世界分布/主要の地域名称〕
台湾、中国、ベトナム、西インド、ボルネオ島
〔 ▓ 利用形態/本種については毒性報告なし〕
樹皮は染料(以前は大島紬に利用)、木炭
日本国内の自生地/150カ所
〈2県/18島/37市町村〉
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GoogleMap
自生地の全体地図
〈地形図と航空写真〉
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Overview
基本特性
〈系統と習性を知る〉
― 和名語源 ―
清楚な女性的印象から「メ/雌」を頭文字に入れ、「ヒルギ/漂木」は胎生種子が水面に漂流する事で「メヒルギ/雌漂木」と決定。明治22年の「植物学雑誌3巻24号1889年:日本植物学会発行」からは、本種の標準和名が常用化されている。

― 学名構成 ―
学名は「Kandelia obovata」。「Kandelia」はインド語でメヒルギの呼び名を指す「kandel/カンデル」に由来する。「obovata/オボバタ」とはラテン語で倒卵形の葉を付けるという意味合いを持ち、学名はこれらの合成語である。

― 分類要素 ―
階級/ヒルギ科>メヒルギ属
学名/Kandelia obovata
発音/カンデリア・オボバタ
英名/Yellow Mangrove(Ceriops属の近縁)
中文/秋茄樹(中国語発音:チィゥ・チィェ・シュ)
別名/コバノヒルギ、リュウキュウコウガイ
植生/マングローブの中心群落(陸側に適応)

― 環境条件 ―
保護/絶滅危惧(環境省DD:鹿児島県II類VU)
気温/年間平均気温18℃以上(亜熱帯性気候)
雨量/年間降水量1,500~3,000mm(陽樹)
土壌/粘土~砂質(平均pH値:4.5%~6.5%)
水質/海水~汽水域(塩分濃度:0%~2.5%)
開花/春季:4月~6月(種子成熟:10月~2月)
繁殖/種子落下➠海流散布➠土壌定着➠生長

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Exterior
形態的特徴
〈識別に役立つ〉
― 全体構造 ―
木の形

樹形/杯形(サカズキケイ)
区分/常緑木本(ジョウリョクモクホン)
性質/平均樹高は低め(2m~5m)
根の形

形状/板根(バンコン)が地上に出現
英名/Butterss-Root(バットレスルート)
性質/呼吸機能、細胞壁で塩分濾過
幹の形

形状/幹周寸法は標準(幹高も短い)
樹皮/表面が茶~灰色(剥がれやすい)
性質/樹皮は防腐力あるタンニン含む
― 器官組織 ―
葉の形

形状/倒卵形の対生(先端が丸い)
表面/黄緑色、光沢質(長さ8㎝前後)
性質/葉内に過剰塩分を蓄積し落葉
花の形

外側/星形の白い萼が5枚(長さ1.5㎝)
内側/白糸状の花びら約10枚(長さ1㎝)
性質/雄雌両性花で昆虫が受粉媒介
実の形

果実/黄金色の長卵形(長さ約2㎝)
種子/胎生種子、黄緑色(長さ約17㎝)
性質/棒状、コルク質(海流散布型)

〔根の形状〕

〔胎生種子〕

〔花の開花〕

〔葉の展開〕
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Distribution
地理的分布
〈国内の分布状況〉
― 列島分布図 ―

| 鹿児島県 | 沖縄県 |
| 自生地数/39カ所 〔6島13市町村〕 |
自生地数/111カ所 〔12島24市町村〕 |
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Region
地域別群落
〈土地の景観性〉
― 伊豆×熊本×天草 ―


自然分布としては位置づけられないが例外として静岡県南伊豆町(青野川)に1カ所群落が存在する。また熊本県でも宇城市不知火町、八代市、津奈木町、天草諸島の計4カ所で自生地が確認されており、いずれも人為的に植樹された。
― 薩摩半島 ―


鹿児島本土の薩摩半島(13カ所)に群落があり川の下流に生育する。鹿児島市喜入生見町では国指定特別天然記念物リュウキュウコウガイ産地が有名であるが、南さつま市大浦町にも幾つか自生地があり冬は稀に降雪する事もある。
― 大隅諸島 ―


種子島(6カ所)、屋久島(1カ所)の合計7カ所で群落があり川の下流や塩生湿地に発達してる。種子島(湊川)では樹高8mの高木があるほか同島の阿嶽川には土手に繁殖する個体や、大浦川では1m未満の矮性型(わいせいがた)も密集する。
― 奄美群島 ―


奄美大島(14カ所)、加計呂麻島(4カ所)、徳之島(1カ所)の合計19カ所の太平洋側で生育する。奄美大島(住用川)では砂の堆積した河口干潟に群落があるほか徳之島(湾屋川)では一時絶滅したが、近年海岸での植樹により復活した。
― 沖縄諸島 ―


伊是名島(3カ所)、沖縄本島(49カ所)、屋我地島(2カ所)、宮城島(1カ所)、久米島(3カ所)の合計58カ所にあり海岸や川の下流で生育。沖縄諸島では最も分布を広げるマングローブ植物であり久米島(儀間川)では原生林が唯一残る。
― 宮古×八重山諸島 ―


宮古島(7カ所)、伊良部島(1カ所)、石垣島(7カ所)、小浜島(1カ所)、西表島(33カ所)、由布島(1カ所)、内離島(1カ所)の合計51カ所あり群落数は減少する。これは寒さに強いメヒルギが南方では勢力を弱める傾向にある理由からである。
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