鹿児島&沖縄マングローブ探検

Nipayashi

水椰子

〈ニッパヤシ〉


日本のニッパヤシ風景
マングローブ林の陸側にかけて生育するヤシ科の常緑低木であり、西表島以南に分布している。密林を流れる水辺で羽のように大きな葉を広げながら、成熟すると繊維質の硬い集合果を実らせ、日本では希少価値のある無茎のヤシである。


〔 ▓ 世界分布/主要の地域名称〕
 インド、東南アジア、オーストラリア、西大西洋
〔 ▓ 利用形態/本種については毒性報告なし〕
 樹液は砂糖・酒・酢の原料、葉は壁や屋根材
日本国内の自生地3カ所
1県/2島/1市町村〉


GoogleMap

自生地の全体地図

〈地形図と航空写真〉

Overview

基本特性

〈系統や習性を知る〉

― 和名語源 ―


ニッパヤシの和名は、学名である「Nypa/ニッパ」に「ヤシ」を後付けで組み合わせた非常に解りやすい構成となっている。椰子の木は日本でも馴染みある言葉であるが「ニッパ」はあまり聞き慣れないため異国情緒あふれるロマンを感じさせる。




系統分類図



― 学名構成 ―


学名は「Nypa fruticans」。フィリピン語で「Nypa」はニッパヤシの名詞で、「fruticans」はラテン語で低木を意味する。Wurmbの追記も稀に見受けられるが、これは本種の分類を定めたドイツ植物学者の名に起源し学名は前者の合成語である。




学名の構成図



― 植物分類 ―

階級/ヤシ科>ニッパヤシ属

学名/Nypa fruticans

発音/ニッパ・フルティカンス

英名/Palm Mangrove

別名/ウォーターココナッツ

植生/マングローブの後背群落 (陸側に適応)


マングローブでの生育区域図

― 環境要素 ―

保護/絶滅危惧ⅠA類CR (環境省版RDB指定)

気候/年間平均気温24℃以上 (亜熱帯性)

土壌/粘土~泥質 (平均pH値:6.0%~7.5%)

水質/海水~汽水域 (塩分濃度:0%~2.0%)

開花/春夏:6月~8月 (果実成熟:不定期)

繁殖/種子落下→海流散布→発芽開始→生長


ニッパヤシの成長過程図


Exterior

形態的特徴

識別に役立つ

― 全体構造 ―
木の形
ニッパヤシの樹形図解
樹形/扇形(オウギガタ)
区分/常緑低木(ジョウリョクテイボク)
性質/平均樹高2m-4mと低い


根の形
根茎の図解
形状/地中で「根茎/コンケイ」を伸ばす
英名/Rhizome(リゾーム)
性質/根茎は軸が成長すると水平分岐


幹の形
葉柄の図解
形状/幹は無く「葉柄/ヨウヘイ」が発達
表面/葉柄は緑色で太く肌触りが良い
性質/横倒しの根茎先端から直角倒立


― 器官組織 ―
葉の形
線状被針形をした葉の図解
形状/線状披針形の複葉で先端が尖る
表面/緑色、光沢質、長さ約50㎝-1m
性質/葉柄から羽状に広がり軸が固い


花の形
ニッパヤシに咲く花の図解
雄花/約10㎝黄色い穂状で茎に伸びる
雌花/黄色い球形で雄花の周辺につく
性質/雄雌別の単性花で虫が受粉媒介


実の形
球状集合果の図解
果実/茶色の球状集合果で熟すと分離
単体/分離後は長さ約10㎝の倒卵型
種子/白いゼリー状で果実内から発芽


ニッパヤシの葉柄

〔葉柄の形〕

ニッパヤシの花

〔花の開花〕

ニッパヤシの葉

〔葉の展開〕

ニッパヤシの果実

〔集合果実〕


Distribution
地理的分布
〈国内の分布状況〉

― 国内自生地 ―



日本のニッパヤシは沖縄県西表島と内離島のみに見られ西表島船浦湾が世界分布の北限である。自生地点は2島3カ所に限られマングローブ植物では一番出現しない樹種ではあるが、種子は黒潮に運ばれて南西諸島沿岸に多く漂着している。





最北端 最南端
西表島
〔ヤシ川〕
西表島
〔大原川〕
最北端⇔最南端までの距離/16km
最東端 最西端
西表島
〔大原川〕
内離島
〔成屋湿地〕
最東端⇔最西端までの距離/18km

― 列島分布図 ―

日本全国のニッパヤシ分布図
鹿児島県 沖縄県
自生地数/0カ所
〔0島0市町村〕
自生地数/3カ所
〔2島1市町村〕


Region
地域別群落
〈土地の景観性〉

― 西表島 ―

西表島大原川のニッパヤシ西表島ヤシ川のニッパヤシ群落

西表島(2カ所)のマングローブ林奥地で生育しており西部地区の船浦湾に注ぐヤシ川の群落は「国特別天然記念物」に指定されている。東部地区では大原川下流に自然漂着した種子が1株発芽しており後良川でも過去生育した記録が残る。

― 内離島 ―

内離島のニッパヤシ群落水路沿いのニッパヤシ群落

内離島(1カ所)の成屋湿地で群生しており「環境省の特定植物群落」に指定されている。当地は人為的開発影響の少ない無人島で西表島(ヤシ川)と比べると繁殖規模や生育状態も良好なため、最近では湿地水路に新たな株が発芽した。

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