鹿児島&沖縄マングローブ探検

Ohirugi

雄漂木

〈オヒルギ〉


日本のオヒルギ風景
マングローブ林の陸側にかけて生育するヒルギ科の常緑高木であり、奄美大島以南に分布している。人の膝のように曲がった根を地面に広げ、棒状の胎生種子と光沢感のある美しい葉を持ち、琉球列島では数多くの群落が形成されている。


〔 ▓ 世界分布/主要の地域名称〕
 アフリカ、東南アジア、オセアニア、ポリネシア
〔 ▓ 利用形態/本種については毒性報告なし〕
 樹皮は染料(漁網)、建築木材、木炭などの原料
日本国内の自生地156カ所
2県/15島/23市町村〉


GoogleMap

自生地の全体地図

〈地形図と航空写真〉

Overview

基本特性

〈系統と習性を知る〉

― 和名語源 ―


雄々しい樹形から「オ/雄」を頭文字に入れ、「ヒルギ/漂木」は胎生種子が水面で漂流する事から「オヒルギ/雄漂木」と決定。明治39年の「植物学雑誌20巻237号1906年:日本植物学会発行」からは、本種の標準和名が常用化されている。


系統分類図



― 学名構成 ―


学名は「Bruguiera gymnorhiza」。「Bruguiera」は1700年後期にフランスの探検家「Bruguieres/ブリュギエール」の献名に由来する。「gymnos」+「rhiza」はギリシャ語で根が露出する意味であり、学名はこれらの合成語である。


学名の構成図



― 分類要素 ―

階級/ヒルギ科>オヒルギ属

学名/Bruguiera gymnorhiza

発音/ブルギエラ・ギムノリザ

英名/Orange Mangrove

中文/木欖(中国語発音:ムー・ラン)

別名/アカバナヒルギ、ベニガクヒルギ、丹殻

植生/マングローブの中心群落(陸側に適応)


マングローブでの生育区域図

― 環境条件 ―

保護/絶滅危惧(環境省DD:鹿児島県II類VU)

気温/年間平均気温21℃以上(亜熱帯性気候)

雨量/年間降水量1,500~6,000mm(陽樹)

土壌/粘土~砂質(平均pH値:4.0%~7.5%)

水質/海水~汽水域(塩分濃度:0%~2.5%)

開花/夏季:5月~7月(種子成熟:4月~7月)

繁殖/種子落下➠海流散布➠土壌定着➠生長


オヒルギの成長過程図


Exterior

形態的特徴

識別に役立つ

― 全体構造 ―
木の形
オヒルギの樹形図解
樹形/円蓋形(エンガイケイ)
区分/常緑高木(ジョウリョクコウボク)
性質/平均樹高は高め(5m~10m)


根の形
膝根の図解
形状/膝根(シッコン)が地上に出現
英名/Knee-Root(ニールート)
性質/呼吸機能、細胞壁で塩分濾過


幹の形
幹の図解
形状/幹周寸法は標準(材質が硬い)
樹皮/デコボコした皮目(ヒモク)が露出
性質/樹皮は防腐力あるタンニン含む


― 器官組織 ―
葉の形
長楕円形をした葉の図解
形状/長楕円形の対生(先端が尖る)
表面/深緑色、光沢質(長さ10㎝前後)
性質/葉内に過剰塩分を蓄積して落葉


花の形
オヒルギにある花の図解
外側/歯状の赤萼が約10枚(長さ3㎝)
内側/橙色の花びら約10枚(長さ2㎝)
性質/雄雌の両性花で鳥が受粉媒介


実の形
胎生種子の図解
果実/萼に包まれ目視困難(長さ2㎝)
種子/胎生種子、深緑色(長さ約15㎝)
性質/棒状、コルク質(海流散布型)


オヒルギの膝根

〔根の形状〕

オヒルギの胎生種子

〔胎生種子〕

オヒルギの幹

〔幹の皮目〕

オヒルギの葉

〔葉の展開〕


Distribution
地理的分布
〈国内の分布状況〉

― 国内自生地 ―



日本のオヒルギは鹿児島県「奄美大島」以南から沖縄県「西表島」まで見られ世界分布の北限である。自生地点は15島156カ所あり、マングローブ植物の中では各地域ともに最も個体数の多い優占種とされ、圧倒的規模の集団群落を形成する。





最北端 最南端
奄美大島
〔東城内海〕
西表島
〔大原川〕
最北端⇔最南端までの距離/713km
最東端 最西端
南大東島
〔大池〕
西表島
〔イドゥマリ川〕
最東端⇔最西端までの距離/782km

― 列島分布図 ―

日本全国のオヒルギ分布図
鹿児島県 沖縄県
自生地数/7カ所
〔2島2市町村〕
自生地数/149カ所
〔13島21市町村〕


Region
地域別群落
〈土地の景観性〉

― 奄美群島 ―

奄美大島のオヒルギ群落加計呂麻島のオヒルギ群落

奄美大島(4カ所)、加計呂麻島(3カ所)の合計7カ所に群落があり、北限のため樹高3mと低く入江や塩水湖にも生育する。奄美大島(住用川)や加計呂麻島(呑之浦干潟)では樹勢が良く、徳之島(湾屋川)でも過去に分布していた。


― 沖縄諸島 ―

沖縄本島のオヒルギ群落屋我地島のオヒルギ群落

伊是名島(1カ所)、沖縄本島(34カ所)、屋我地島(2カ所)、宮城島(1カ所)、久米島(2カ所)の合計41カ所に群落があり奄美地方と比べると樹高が高い。自生地は川の下流に集中しており屋我地島では樹齢100年の巨木が立ち並ぶ。


― 大東諸島 ―

南大東島のオヒルギ群落皮目が発達した南大東島のオヒルギ

南大東島(4カ所)に生育しており大池の畔では外洋と切り離された淡水池に陸封型群落を形成する。世界的にも稀な地形であるほか一般的なオヒルギは地面に膝根を出現させるが、当地ではそれが目立たず幹の皮目が発達する。


― 宮古諸島 ―

岩礁で根を張る宮古島のオヒルギ宮古島のオヒルギ群落

宮古島(5カ所)、伊良部島(1カ所)の合計6カ所で生育しており樹高4mの木々が群落を作る。宮古島(川満)では地下水と海水が混ざり合う汽水池にも自生地があり、入江湾最深部では琉球石灰岩に根を伸ばす低木も見られる。


― 石垣島×小浜島 ―

石垣島のオヒルギ群落小浜島のオヒルギ群落

石垣島(31カ所)、小浜島(1カ所)の合計32カ所で自生地が確認され海岸や川の中流域まで広く群生する。石垣島北部にある吹通川では河口から離れた支流にあるマングローブ湿地帯でも樹高10m以上を超える高木が密集する。


― 西表島×周辺離島 ―

岩礁に根を張る西表島のオヒルギ西表島のオヒルギ群落

西表島(63カ所)、由布島(1カ所)、内・外離島(3カ所)の合計67カ所で群生しており森林を形成する。西表島/ユツン川ではマングローブ林から離れた砂浜にもオヒルギが発達しており根元が砂に埋もれながらも生育している。


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